3月28日、イギリス・ケンブリッジ。
ロンドンから北東へ80km、誰しもが一度は聞いたことがあるであろうケンブリッジ大学の所在地。オックスフォード大学と並び、世界大学ランキングでは常にトップクラスの大学として評価される世界有数の名門大学です。大学の近くにはスーパーやショッピングモールなどがあり、大学を中心に栄えたまさに大学都市という印象。
そんなケンブリッジでお会いしたのは、外資系に勤務した後地元飛騨古川でゲストハウスiori、そして現地の伝統・文化・仕事を深く学ぶことが出来る体験プログラムを提供するWEBサービス、旅ジョブを立ち上げ、現在ケンブリッジMBA留学中という松場慎吾さん。
グローカルに活躍する松場さんがなぜ2つの事業を立ち上げ留学に至ったのか?MBA留学での経験などを話して頂きました。
✔松場慎吾さんとは?
−始めに略歴を現在の活動を教えて下さい。
「大学卒業後は在学中に留学の経験もあったことから外資系の金融機関に就職し、企業の資金調達の支援や銀行の資産売却業務等を7年間経験しました。その後2014年4月に、保育園からの幼なじみと共に地元、飛騨古川にてゲストハウスioriを、また大学時代の友人と現地の伝統・文化・仕事を深く学ぶことが出来る体験プログラムを提供するWEBサービス、旅ジョブも立ち上げました。この2つの事業を立ち上げた後に、共同経営者の同意を得て、現在はケンブリッジ大学のMBA留学をしています。 また、こちらはボランティアですが、2012年より飛騨の人々、特に若者に向けて飛騨の人々を紹介するインタビューサイトhidaiiyoも運営しています。」
✔震災後に感じた出身地、飛騨古川への地元愛。
−外資系金融機関を退職して地元飛騨古川にてゲストハウス開業に至ったきっかけは何だったのですか?
「大きなきっかけは東日本大震災です。
自分たちにも何かできないことはないかなってなった時に周りを見渡すと、すでにあらゆる人が被災地に向かっていました。
食料などの支援は進んでいたようなので自分たちにしか出来ないことをしようと思い、地元、飛騨古川の特産品さるぼぼをお守りとして被災地に送るプロジェクトを行いました。また自分たちも実際に現地に赴き、被災者の方たちのお話を聞いたりボランティアも行いました。
そんな中、大変な時期に地元を諦めずに頑張っている現地の人たちを見て、その帰り道の車の中で、なぜか自分たちも地元に対する思いが高まったのです。
そして「俺らもなんかやろうぜ」となり、地元で庭師をしていた幼なじみと「日本の美しい庭を広め海外で庭をつくりたい」「地域に貢献していきたい」というお互いの夢を合致させて、庭のあるゲストハウスを地元飛騨古川に作ろう!となったのです。」
✔地方の雇用を創出するための究極のローカライゼーションを。
「旅ジョブ」は豊洲のテラスでいつものように大学の友人である藤田とこれからの人生について語っていた時に始まりました。私の夢は地元を拠点に地方の活性化にビジネスを通じて貢献することでした。そして、藤田の夢はビジネスを通じた貧困層の雇用創出(アジアやアフリカでの原体験がきっかけ)。
彼は大手商社、私は外資金融に進んだにもかかわらず、大学の頃から二人とも言っていることは何も変わっていませんでした。そして、いまの世界を見るときの切り口は国と国もあるけれど、「都市」と「地方」 で切ることで二人の夢が重なりました。
日本も世界も様々な要因はあるものの経済成長の中で地方が取り残されています。まず若者が都市の大学に進学した後、帰ってこない。そして、例え帰ってきたとしても仕事が無い。
だからこそ、自分たちがビジネスを通じて地方の雇用創出に貢献していく。これもダイレクトに仕事を生み出すだけではなく、間接的に仕事を生み出せる仕組みを作る。
私たちは旅ジョブの提供するサービスを究極のローカライゼーションと呼んでいるのですが、このローカライゼーションを実践していくことで地方と都市の格差の縮小に貢献していくことが出来ると確信し、株式会社旅ジョブを立ち上げました。
*参考)旅ジョブとは?

旅ジョブは、誰でも参加できる気軽な職業体験提供することで、より記憶に残る旅、いい出会いを提供するサービスです。週末を非日常を味わい有意義に過ごす、自分が本当にやりたいことを探す、旅先での体験をより濃く楽しいものにする等のニーズに答える濃い体験をお届けします。体験を通して参加者とホストの間に繋がりが生まれることで、より人々の生活が豊かになっていって欲しいと思っています。
参考リンク)
名古屋テレビのUP!によるインタビュー動画
✔人生のステージの一つの区切り、これまでのキャリアの総括としてのケンブリッジMBA留学
−ありがとうございます。ではその2つの事業を立ち上げた後になぜMBA(経営学修士)留学という選択をしたのですか?
もともと漠然と憧れのあったMBA留学でしたが、将来自分がMBA留学するとはまさか思っていませんでした(笑)。
将来地元に帰りたいという思いが強くあったのですが、そのためには一度自分が選んだキャリアをやりきらなければ、と考えていました。MBAホルダーの元上司やLBSに留学した元同期の影響を受ける中、選択肢の1つとしてMBA留学をして自分のキャリアに1つの区切りをつけようと思ったのです。
また、MBAを通じてゲストハウスiori と株式会社旅ジョブという二つの事業を拡大していくのに必要な知識や、スキルの習得をするというのも理由の1つです。事業計画策定、資金調達、商品開発、マーケティング等を共同創業者と試行錯誤しながら行いましたが、その中で、自分の知識・スキル不足を痛感することが多くあったのです。
✔ケンブリッジMBA留学の魅力とは?

−現在、MBA留学ではどんなことを行っているのですか?
現在はアメリカ、タイ、デンマーク、日本というメンバー構成で星野リゾート様向けに戦略コンサルティングを行うプロジェクトを行っています。
ケンブリッジのMBAには授業の他にプロジェクトを運営する、より実践的なプログラムがあります。参加するには大学が用意したプロジェクトに参加するか、または自分でプロジェクトを調達しなければなりません。
大学側が用意するプロジェクトはAmazonやGoogleへのグローバルコンサルプロジェクトなどがありますが、メンバーは大学が選定します。僕はどうせやるなら日本での自分の事業に活きてくるプロジェクトを行いたかったので、自分でプロジェクトを調達し、自分でメンバー集めをしました。
育った環境や考え方、それぞれのモチベーション(就活、勉強、課外活動等)も違う中で結果を出して行くのは大変だと既に感じていますが、この経験を通じて人としての幅を広げることが出来ると思っています。」
✔日本、そして世界中の地域に貢献していきたい
−MBA留学を終えた後、そしてこれからの将来設計について教えて下さい。
「私の目指すところは「地方の活性化」です。
それを軸にゲストハウスの事業は出来れば2店舗目、3店舗目と規模を拡大していきたいです。旅ジョブの方では現在は飛騨、東京、神奈川、京都と徐々に国内に拡大しているのですが、もっともっと知名度を高めて、色々な職業体験を様々ジャンルで提供していきたいですし、インバウンドにも対応していきたいです。
将来的には国内で軌道に乗れば世界の地域にも進出していきたい。
日本、そして世界中の地域に貢献していきたいと思っています。」
✔自然なモチベーションに寄り添って。
−最後に日本の若者に向けてメッセージをお願いします!
「心から湧いてくる自然なモチベーションを大事にして欲しいです。何度も自分に帰ってくるもの。
私のそれは地元に対する思いでした。一度、金融機関で働きましたが、やっぱりそういう思いとか自然なモチベーションて、何かのきっかけで必ず自分に戻ってくるものなんですよね。
だからそういう感情に寄り添って、生きてほしい。
あと、1つ付け加えるとすると、
何よりもそういう人生はめちゃくちゃ大変だけどめちゃくちゃ楽しいですよ!」
✔インタビューを終えて:グローカルという視点
インタビューの中で気になったのが、都市と地方というキーワード。
松場さん自身、学生時代は留学経験があり、その後外資系企業に進んでいます。上司も同僚も外国人だったということからまさにグローバルに働くお人です。しかし、現在は地元、飛騨古川を拠点にローカルにも目を向け(むしろご本人はローカルを軸に考えて)活動しておられます。
グローバルな視点を持ってローカルの課題を解決する。そしてまた再びローカルからグローバルへ。
まさにグローカリゼーションの視点で活躍しているなという印象でした。地方の過疎化が進む今の時代、グローバルだけでなくローカルに考えられる人間が求められてくるのかもしれません。今までグローバルオンリーで考えがちだったぼくも、地元宮城仙台に何ができるか考えさせられるインタビューとなりました。
松場さん、今回はお忙しい中インタビューを引き受けて下さりありがとうございました!